「今は忙しいから」「当人同士の問題だから」と、現場で起きている従業員トラブルから目を逸らしていませんか?
実は、従業員トラブルの放置は、企業の法的責任を問われるだけでなく、組織崩壊を招く「経営上の致命傷」になりかねません。
ひとたび事態が悪化すれば、労働契約法に基づく「安全配慮義務違反」を問われ、多額の損害賠償や社会的信用の失墜を招く恐れがあります。
本記事では、専門家の視点から従業員トラブルを放置することの法的リスクを整理し、企業を守るための具体的な解決手順をわかりやすく解説します。
従業員トラブルを放置するとどうなる?リスクと法的責任
従業員トラブルを放置することは、法律上「会社がその状態を黙認した」とみなされます。
これにより、会社は主に以下の2つの法的責任を問われる可能性が高まります。
1. 安全配慮義務違反(労働契約法第5条)
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
この「安全」には、心の健康(メンタルヘルス)も含まれています。
パワハラや過重労働によるトラブルを放置し、従業員がメンタル不調に陥った場合、会社はこの義務を怠ったとして損害賠償責任を負う可能性があります。
2. 使用者責任(民法第715条)
「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」
従業員が他の従業員や第三者に損害を与えた場合、会社も連帯して責任を負うという規定です。
トラブルを放置して被害が拡大した場合、「会社が適切な監督を怠った」と判断される根拠となります。
また、715条後段ただし書きは会社を守る側の規定ですが、そう簡単に認められるものではありません。
| リスクの種類 | 具体的な損失 |
| 法的リスク | 損害賠償金の支払い、労働局からの勧告、訴訟対応コスト |
| 経済的リスク | 生産性の低下、採用コストの増大(離職率の上昇) |
| 社会的リスク | 企業イメージの悪化、SNSでの炎上、取引停止 |
村山花純上記のように、会社には非常に重い責任が付帯されていることがわかります。
これらは、従業員と労働契約をした日から当然ついてくる義務になり、会社規模は関係ありません。
放置厳禁!よくある従業員トラブルの事例
現場で「よくあること」と見過ごされがちな以下の事例を例示します。
これらを放置すると、会社は最終的に深刻な事態を招くことになりかねません。
- ハラスメントを放置し常態化
「あの人は仕事ができるから多少の口の悪さは仕方ない」等という風に放置していると、優秀な若手社員の離職と、多額の慰謝料請求(パワハラ防止法違反)を招きます。 - 勤怠不良・ローパフォーマーの放置
遅刻や居眠りを繰り返す社員を放置すると、真面目に働いている周囲の社員に「頑張るだけ損だ」という心理的悪影響を与え、組織全体のモラルを崩壊させます。 - SNSへの不適切投稿を放置
私生活のことだから・・・と放置している間に、顧客情報や社内の機密情報が流出し、企業のブランド価値が一夜にして失墜するケースも実際に存在します。
従業員の明らかな問題を発見した際や、他の従業員からの声が上がった際などは、まずは事案に集中することが重要です。
顧問社労士などがいる場合は、速やかに相談し、指示を仰ぐようにしましょう。
従業員トラブルを放置せず解決するための4ステップ
実際にトラブルが発生、または予兆を感じた際、会社は速やかに対応する必要があります。
とはいえ、何から手をつけたらいいのかわからない、といった悩みを抱える会社も多いはずです。
会社で最初にできる手順について、4つのポイントに絞り、以下にわかりやすく解説していきます。
ステップ1:事実関係の客観的な調査
まずは人事担当者などにより、感情的なバイアスを排除したうえで、いつ・どこで・誰が・何をしたのかを当事者などにヒアリングします。



ヒアリングは当事者だけでなく、周囲の目撃者からも意見を聴取し、メールやチャット履歴などの物理的証拠を確保すると安心です。
また、ヒアリングした内容においては、必ず議事録を作成しましょう。
更なるトラブルを回避できる材料となります。
ステップ2:就業規則との照合
次に、調査した事実が自社の「就業規則」のどの条項に抵触するかを確認します。



根拠となる規定がない状態で懲戒処分を行うと、「権利濫用(労働契約法第15条)」として無効になる恐れがあります。
就業規則は労使のトラブルに欠かせないマニュアルです。
就業規則がない、もしくはトラブル解決に沿った根拠規定がない場合は、起きたトラブルを機に作成を見直す必要があります。
なお、従業員数が10人未満であっても、就業規則の作成は推奨されています。
※常時10人未満の場合、労基署への届出義務はありません。
ステップ3:適正な指導と処分の検討
まずは当事者への口頭注意から始め、改善が見られない場合は書面による警告、それでも改善しない場合に初めて懲戒処分を検討します。



処分の重さが事案の内容と釣り合っているか(相当性)を慎重に判断します。釣り合っていない場合、その処分は無効とされる可能性があります。
このフェーズにおいて、会社の判断は極めて慎重に行わなければなりません。
少しでも不安がある場合は、大きなトラブルに発展する前に専門家を頼ることを検討しましょう。
ステップ4:再発防止策の立案と実行
最後のステップになります。
最終的には個人の問題で終わらせず、なぜそのトラブルが起きたのかという背景(環境・制度)を分析し、ルール作りや研修を実施します。



トラブルは一朝一夕では解決しません。
専門家の研修受講やその後の対策検討、事案の集積や振り返りに注力することが大切です。
社内制度の作成や分析は、必ずしも会社内だけで行う必要はありません。
社労士や弁護士などの専門家を頼り、安全を第一に考えて行うことがもっとも効率的といえるでしょう。
従業員トラブルを未然に防ぐ「強い組織」の作り方
従業員トラブルは、トラブルが起きてから対処するのではなく、起きにくい環境を作ることが経営の安定に繋がります。
具体的な対策を以下に例示します。
- 就業規則の定期的なアップデート
法改正(育児・介護休業法やパワハラ防止法など)に対応していない古い規則は、いざという時に会社を守ってくれません。 - 相談窓口の形骸化を防ぐ
「相談しても無駄」「報復人事がある」と思わせない、信頼される窓口(社外窓口の活用など)が必要です。 - 管理職への教育徹底
現場のリーダーが「トラブルの芽」を早期に発見し、適切に報告・対処できるスキルを身に付けさせることが、放置を防ぐ最大の防壁となります。
労働関係の法改正は毎年頻繁に行われています。
通常、会社の業務に従事する方々が、その情報をすべて追うことは非常に困難であり不可能に近いともいえます。



対策をしない・対策をしてもしなくてもなんとかなるだろう、といった考え方は非常に危険です!
これまでの解説通り、対策を怠ることが最も危険であり会社の経営リスクを脅かします。
まずはできるところから、トラブルに強い専門家を頼って対策すること(行動すること)が何より重要といえるでしょう。。
まとめ:従業員トラブルの解決は当事務所へご相談ください
従業員トラブルの放置は、雪だるま式にリスクを膨らませるだけです。
初期段階で適切な法的措置を講じれば、最小限のコストで解決できた事案も、時間が経つほどに修復は困難になります。
「こんな些細なことで相談してもいいのだろうか?」と迷う必要はありません。
当事務所では、労働法の専門家として、貴社の就業規則の診断から、具体的なトラブル解決、再発防止の組織作りまでトータルでサポートいたします。
まずは、大きな問題に発展する前に、一度当事務所までお気軽にお声がけください。







