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管理監督者研修とは?管理監督者の責任や心理的安全性についても解説

「管理職にはある程度任せているが、実際にどこまで理解して動けているのか分からない」経営者や人事担当者の方においてはこのような疑問を持たれている方も多いのではないでしょうか。

労働時間や部下の健康管理、ハラスメントへの対応、これらはすべて会社の義務ですが、実際にその義務を果たすのは現場の管理監督者です。
それにもかかわらず、昇進のタイミングで体系的な教育を受ける機会がないまま、責任だけが増えていくケースは少なくありません。

この記事では、管理監督者研修とは何か、対象者は誰か、そして何を学ぶべきかを、社会保険労務士の視点から整理します。
特に、近年重要度が増している安全配慮義務職場の心理的安全性について、実務レベルで解説します。

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目次

管理監督者研修とは?目的と対象者

この章では、管理監督者研修の目的や対象者など、基本的な内容について解説します。

そもそも「管理監督者」とは誰を指すのか

まず押さえておきたいのが、労働基準法上の「管理監督者」は、会社が付けた役職名では決まらないということです。

労働基準法においては「監督若しくは管理の地位にある者」について、労働時間・休憩・休日に関する規定を適用しないと定めています。
しかし該当するかどうかは、①経営者と一体的な立場といえる職務内容と責任・権限があるか、②出退勤について厳格な制限を受けていないか、③地位にふさわしい待遇(賃金等)を受けているか、といった実態で判断されます。

「課長職だから管理監督者、だから残業代は不要」という運用は、いわゆる名ばかり管理職の典型です。また、このような認識誤りによって、後に多額の未払い賃金を請求されるリスクを抱えることもあります。

村山花純

なお、管理監督者に該当する場合でも、深夜労働の割増賃金と年次有給休暇は適用されます。
管理監督者研修においては、基本的な概念から認識のすり合わせをすることも重要です。

管理監督者研修は、「自分の立場と権限は法的にどう位置づけられているのか」を本人が理解するところから始まります。そのため、研修受講対象者は管理監督者に限らず、次期管理監督者も対象(予習)にするケースがあります。

一般的な管理職研修との違い

リーダーシップ、目標管理、コーチングといった一般的な管理職研修が「成果を出すための技術」を扱うのに対し、管理監督者研修の中心にあるのは法的な責任と義務の履行です。
会社が負う義務の多くは、現場の管理監督者が動かなければ実現しません。その意味で管理監督者は、会社の義務を現場で実行する最終ランナーです。
ここを教えないまま権限だけを渡すと、労務トラブルの最大の温床になる危険性が増します。

管理監督者が負う3つの責任

次に、管理監督者が負う法的な責任について解説します。
実際に管理監督者になった方が知らないというケースも多いのが実情ですが、無知のままでいることは危険です。無知のままでいると、会社や管理監督者本人が非常に重い責任を負う可能性があります。

① 労務管理の責任 |労働時間の把握と長時間労働への対応

管理監督者になると、残業代(時間外・休日の割増賃金)の支払対象から外れます。そのため「労働時間の把握はしなくてもよい」と考えてしまう方がいますが、これは誤解です。

労働安全衛生法は、事業者に対して、働いた時間を客観的な方法で把握するよう求めています。タイムカードやパソコンの使用記録などがこれにあたります。そしてこの対象には、管理監督者自身も含まれます

つまり管理監督者は、「残業代の計算からは外れるが、健康管理の対象からは外れない」立場です。会社は、管理職本人の働きすぎにも目を配る必要があるのです。

また使用者側は、労働者の時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められると本人から申出があった場合、医師の面接指導につなぐ必要があります。
たとえば部下からそのような申し出があった場合には、管理監督者の責任によって管理しなければなりません。

村山花純

管理監督者は、「使用者側」の責任を負うことを知っておくことが重要です。

② 安全配慮義務の責任 |労働契約の付随的義務

労働契約法第5条は、使用者は労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をしなければならないと定めています。

義務を負う主体は会社ですが、実際に配慮を実行するのは現場の管理監督者です。

村山花純

過重労働の兆候、体調不良のサイン、危険な作業手順など、これらに最初に接するのは管理職です。
「報告がなかった」「知らなかった」という説明は、仮に紛争になった場合ほとんど通用しません。

③ ハラスメント防止措置の責任

パワーハラスメントの防止措置は、労働施策総合推進法により中小企業を含むすべての事業主の義務とされています。
相談を受けたときの初期対応、事実確認、被害者への配慮など、その多くを管理監督者が担います。

なお、近く対応が必要になるのがカスタマーハラスメント対策です。
2025年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が事業主の義務となります
対象は労働者を1人でも雇用するすべての事業主で、中小企業も例外ではありません。方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の適切な対応などが求められます。

顧客対応の最前線に立つ部下を守れるかどうかは、その場にいる管理監督者の判断と、会社が事前に示した基準にかかっているのです。

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なぜ今、管理監督者研修が必要なのか

管理監督者研修が必要な理由は大きく二つあります。

一つは、法改正が継続的に発生していることです。前述のカスハラ対策義務化に加え、令和6年4月1日からは雇入れ時の安全衛生教育について、従来一部業種で認められていた項目の省略規定が廃止、全業種で全項目の実施が必要になりました。数年前の知識のままでは、現場は正しく判断できません。

もう一つは、労働災害が減っていないことです。厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」(令和8年5月27日公表)によれば、死亡者数は700人と過去最少になった一方、休業4日以上の死傷者数は135,333人と高止まりしています。業種別では商業が23,128人(前年比1,089人・4.9%増)と増加しました。

そして、責任が問われる場面で必ず確認されるのが、「教育をしていたか」「その記録が残っているか」です。

村山花純

研修は、従業員を守ると同時に、会社を守る記録にもなります。

心理的安全性は「優しさ」ではなく、リスク管理の仕組み

近年よく耳にする心理的安全性は、「和やかな職場をつくること」でも「厳しく言わないこと」でもありません。リスク情報が滞りなく上がってくる状態のことをさします。

報告が上がらない職場で起きること

現場から報告が上がらない職場では、以下のようなリスクが生じます。

  • ヒヤリハットが共有されず、同じ危険が放置される
  • 軽微なけがが「言い出しにくい」ために現場で処理される。
    ※労働者が労働災害により休業したときは、遅滞なく労働者死傷病報告を労働基準監督署長に提出する義務があり、これを怠れば「労災かくし」として罰則の対象になり得ます
  • 体調不良やハラスメントの相談が遅れ、休職や紛争になってから会社が知る

沈黙はコストです。
管理監督者が「悪い知らせほど早く聞きたい」という姿勢を示せているかどうかが、事故の芽を摘めるかどうかを左右するのです。

管理監督者が明日から実践できる4つの行動

善は急げです。
ここでは、管理監督者がすぐに実行できる4つの行動をご紹介します。

  1. 悪い報告を持ってきた人を責めない。まず報告そのものにお礼を言う
  2. 「迷ったら報告」を繰り返し口に出す。判断基準を個人に委ねない
  3. 指摘は人ではなく行為に向ける。「あなたはダメだ」ではなく「この手順を変えよう」
  4. 自分の失敗や判断の迷いを先に開示する。上司が完璧を演じる職場では、部下は弱みを出せません

安全配慮義務を果たす3つのステップ

管理監督者に求められる実務は、「気づく・つなぐ・記録する」に整理できます。

気づく——勤怠の乱れ、遅刻や欠勤の増加、表情や口数の変化、特定の人への業務集中。数字とふるまいの両面から変化を捉えます。

つなぐ——気づいた後に、誰に、どのタイミングで上げるのかを管理監督者自身が把握していること。産業医、相談窓口、人事部門への経路が明確でなければ、気づきは行動になりません。「迷ったら上げる」を許容する運用とセットで機能します。

記録する——面談の日時、聞き取った内容、講じた措置を残す。これは管理監督者を守る記録でもあります。

これらを習慣化することで、管理監督者の安全配慮義務は果たされやすくなるでしょう。

効果が出る管理監督者研修の選び方

研修は、受ければよいというものではありません。研修受講を検討する際は、以下の5点を確認するようにしましょう。

  1. 自社の就業規則や規程と接続しているか(一般論で終わっていないか)
  2. 自社の業種・勤務実態に沿った事例が使われているか
  3. 一方的な講義ではなく、管理職が発言し考える場があるか
  4. 受講記録が残る形式になっているか
  5. 法改正のたびに内容が更新されているか

特に一つ目は重要です。研修で学んだ内容と自社の規程が食い違っていると、現場は結局どちらに従えばよいか分からなくなります。

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とわ社会保険労務士事務所の管理監督者セミナー

当事務所では、管理監督者研修(管理監督者セミナー)に力を入れています。当事務所による研修(セミナー)の特徴は以下の3点です。

自社の規程に合った内容にカスタマイズ

就業規則や諸規程の作成を専門とする事務所として、御社の規程と矛盾しない、現場がそのまま使える内容でお届けします。

法改正への随時対応

2026年10月施行のカスタマーハラスメント対策義務化をはじめ、最新の法改正を反映した内容に更新しています。

ケーススタディ形式

「部下から体調不良の相談を受けたら」「顧客から長時間の叱責を受けた部下がいたら」といった具体的な場面で、管理職に考え、発言していただく形式をとっています。

対面・オンライン・ハイブリッドのいずれにも対応し、貴社での社内開催も承ります。
研修後の規程整備や、周知・記録の仕組みづくりまで一貫してご支援できる点が、社会保険労務士事務所ならではの強みです。

「管理職に何を教えればよいか分からない」「法改正への対応が追いついていない」などお感じでしたら、内容や日程のご相談だけでも構いません。

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まとめ

管理監督者研修とは、役職者に権限を渡すための研修ではありません。
会社が負う義務を、現場で確実に果たせる状態をつくるための研修です。

責任の範囲を正しく理解し、安全配慮義務を実務に落とし込み、報告が上がる職場をつくる。この3つが揃ったとき、管理監督者は会社にとって最大のリスク管理装置になります。

まずは一度、貴社の管理職が何を知っていて何を知らないのかを確認するところから始めてみましょう。
管理監督者研修をしたいけど何から始めたらいいのかわからない、といったお問合せについても歓迎しております。

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